「はじめました。」  エツコ-spinningball-コヤス

 

「〜〜はじめました」この文字に私は心ときめいてしまう。 ひさびさに入ったラーメン屋の壁に、ペたりと貼られた写真入りのポスター。清涼感あふれるブルーのバックに黄色っぽい麺と青いキュウリ。紅ショウガの赤がひどく効いている。 そう、それはまぎれもない「冷やし中華はじめました」のポスターなのだった。
ああ、暑い季節がまたやってきた。ちょっとすっぱいタレの味が舌の上に蘇る。そうなると、いつものチャーシュー麺がしつこく感じ、おひやを持って来てくれたおばちゃんに「冷やし中華ひとつ」と、オーダーしてしまう。
「はじめました」に乗せられてパブロフの犬状態になってしまうのだ。だって、なんか季節先取りっぽくて嬉しいんだからしょうがない。
  また、しばらくすると、喫茶店なんかには「かき氷はじめました」の文字が出る。紺色の枠に赤い字で 「氷」と書かれたちいさな旗が、店の軒下に踊るのだ。濃い影を踏みながら汗をふきふき、日陰を求めて歩いている時のこの文字に、砂漠の中にオアシスを見たと行っても過言では無いだろう。揺れる旗を見た瞬間に「いちごかレモンか、はたまた宇治金時か?」と悩んでしまうのは私だけじゃないはずだ。

  季節の移り変わりの早いこの時期、「はじめました」は至る所で見る事ができる。たまに出かけるゴルフ場のクラブハウスでも「ざるそばはじめました」と、メニューにある。蕎麦好きな私としてはいつの季節でもおいといて欲しいところだが、普通、これは夏のものらしい。できれば、秋が過ぎるまでおいてくれないか?と願う。というか、大好きなものまで勝手に「はじめ」られたり「おわり」にしたりしないで欲しいのが本音だ。アイスコーヒー然り、クリーム白玉ぜんざい然りである。 でもこれって、一学年にひとりはいた、「真冬なのに半袖半ズボンで学校にくる男のコ」的意見だろうか?「日本人なら、季節感を大切にしなけりゃ。」って、おばあちゃんから言われそうだ。でも、少数意見だからって多数に流されずに毅然と自分の意志を持っていたいものだ。って、大袈裟か 。

  そうそう。近ごろ我が家ではじめたのは「ジュース」作りだ。ミキサーに適当なくだものと牛乳、氷など入れて、ジャ〜ンとまわしたヤツだ。喫茶店でアルバイトをしていたことのある私は、ミックスジュースやバナナジュースが得意で、昔とった杵柄さながらに、店のレシピどおりに作っては懐かしい味にひたっている。春のジュースの多くは苺だったのだが、ダンナと幼い娘もとりあえず嬉しそうにつきあってくれた。
これはせっかくはじめたのだから、次の季節が来ても終わらないで続けていきたいと思っている。
さしずめ真夏には田舎で採れたトマトのジュースかな。なんか体によさそうだ。

 


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