「STAIRWAY TO HEAVEN (天国への階段)」 Jun


80年代はじめ…。
私の場合、高校に通い始めたころの話である。
学校ではやっていたファッションはハマトラ&ニュートラで、 パリスの紺スカ、
ボンボン付きハイソックスにミハマの靴、が定番スタイル。
女子高生ブームでちやほやされ、 ほぼ例外なく、
自分たち中心に世界が回っていると錯覚していた時代…
巷では、ディスコ全盛期。
渋谷・スペイン坂や六本木を歩けば、店員がインビテーションカードをくれる。
ピンクや黒、透明…と色鮮やかに私たちを誘い、 親の目をごまかしては店に通っていた。
「もらったカードが計何枚か」などと、どうでもいいようなことで 友人と競い合ったりもした。
ディスコ命、のクラスメイトたちは、 休み時間のたびに数人で輪になり、
ダンスの練習に余念がない…。
そんな旬の時期だったから、もちろん、ノリのいい音楽も大好きだったが、
反面 、切ない曲にも心ひかれていた。
それはまるで―。 ヒザ上の短いスカートもはくが、アコーディオンのロングスカートもはく、
モーグルスキーが好き! という体育会系の要素も持ちながら、
文化祭では、ロックバンドでベースギターを弾いたりと、
何をするにも、まるでやじろべえの右手と左手の間を、不器用に行ったり来たり、
早く自分というものを確立したくて、 何かにせきたてられるように日々を過ごしていた曖昧な自分の、
内なる部分がそのままに表れていたのではないかとも思う。
ま。 つまりは、どの色にも染まれる・・・ 他人の影響を最も受けやすい、多感な時期だったということだ。

話をタイトルに戻そう。
「天国への階段〜STAIRWAY TO HEAVEN」は、1971年に発表された LED ZEPPELINの、
あまりにも有名なアルバムの中の1曲である。
でも、自分にとってのツェッペリンは【80’Sだった】 ということで、選曲させてもらうことにした。
高校に入ったらエレキギターがやりたいと思った私は、 文化祭の研究グループには、迷わずロック研を選んだ。
て、普通は最低、バンドに4〜5人は必要だから、 メンバーを集めてから入るっていうのが筋というもの。
でも、あまり深く考えないタイプだったので、とりあえず入研。
と、私と同じような考えで、「単身入りました」という人がほかに3人いた。
合計4人で、めでたくロックグループが結成されたという、 なんともおそまつ(でも単純明快)ないきさつがある。
組んだバンドの名前が「HEAVEN」。
メンバー全員が、ツェッペリンの名ギタリスト・ジミーペイジのファンだったので、
大好きなこの曲のタイトル名からいただいて名付けた。
さて、バンド名もさっさと決まって、誰が何を担当しようかという話になった。
中学時代からヴォーカル&キーボードをやっていたS、 同じくドラムスをやっていたMは、不動の位置をキープ。
そして、小学時代からクラシックギターを続けていたNがギターになったので、 残った私は、残ったベース担当と相成った。
なんだ、結局初心者は私だけってことか・・  しかも、当初の予定と違って地味な感じぃ。
でも決まったことはしょうがない。初心者だけに、強く言い切るだけの土台もなかっ た。

そこでまずは、ベースを買いに走る。
何事も形から入りたい私は、フェンダー社のプレシジョンベースが欲しかったが、
貧しい高校生にそんなお金などあるはずもなく、 フェルナンデス社の安いタイプにした。
弾こうと思っても、右も左も分からない状態だったので、 近所のチョッパーびしばしのお兄さんに弟子入りし、
まずは、ベースの音をとるところから始めた。
来る日も練習にあけくれ、皆とは、スタジオで音合わせする日々。
秋の文化祭に向け、調整も進んでいった。

そして迎えた当日。
下っぱの私たちは、照明や雑用に走り回っていた。
弁護士や医者のお嬢様ばかりで結成した3年生バンドは、
黒の皮パンツをさらりと着こなし、実力&ファッションともに文句なし。
個々の実力がずば抜けて高い2年生バンドも、 プロ並みのヴォーカルで、会場を圧倒していた。
(2年生バンドは、その後スカウトされ、CDデビューした経緯がある)

で、お次は私たち1年生バンドの初ステージである。 先輩が、
「HEAVENのみんな、そろそろ着替えていいよ。雑用変わるから」
と声をかけてくれた。
私たちは、みなジーンズにTシャツ姿だったから、先輩がそう言うのも当然なのだが、
実は、その姿のままステージに立とうと思っていた私たち。 実力もないんだから、ジーンズでいいね、と。
しかし。 やっぱり、衣装ぐらいキチンとしておけばよかったなぁ・・
ステージを降りた後、みな心ではそう思っていたに違いない。 それほど、HEAVENのステージはお粗末だった。

「足を引っ張ってすみません」
と謝る私たちを、 先輩は
「最初はそんなもんだよ 」
と慰めてくれた。

  ♪=-*♪=-*♪=-*♪=-*♪=-*♪=-*♪=-*♪=-*♪=-*♪=-*♪

発奮したHEAVEN。
巻き返しをはかるべく、来る日も来る日もスタジオに通った。
ドラムのMは教室にも通い、ギターのNは血がにじむほど練習を続けた。
3年生になると、シンセサイザーのFがメンバー入り。
「どんな音でもとれるよ」
と、頼もしい限りだ。

最後の文化祭がやってきた。
最終日の最終ステージ=トリは私たちHEAVEN 。
ヴォーカル・Sがバンド名の由来を話し、
「じゃ、STAIRWAY TO HEAVEN♪ いきます。聴いてください」
と言った。切ないギターソロが始まる。後半曲は盛り上がり、そして静かに終わった。

その後は、 高校生らしいパワフルな曲が続いた。
メンバーは、みなそれぞれに、持てる力の限りを出しきった。
私も、3年がかりで習得したチョッパー・ソロを披露し、このまま指がちぎれてもいい、とさえ思った。
会場は総立ち。見に来てくれた友だちが声を枯らさんばかりに応援してくれている姿が、
まるでスローモーション のように映ったのを、今でもはっきり覚えている。

天にも昇る気持ち

生まれて初めて味わう快感だった。
ステージを降りると、
「先輩っ、感動しました〜」
そう言って、後輩たちが飛びついてきた。
そのままみんなでスクラム組んで、ただひたすら泣き続けた。

                 ♪

そんな【時】を共に過ごしたベースを、昨年、高校生になったいとこに譲った。
安いベースでも、彼は「うぉう、フェルナンデスのベースだあ」と大喜びしてくれ、 とても大事そうに持って帰った。
(また1から始まるんだ…)
私は、彼のこともベースもいとおしくなり、 そして、あの時のあの瞬間を、懐かしく思い出した。

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*注* チョッパー奏法=「スラッピング」が正式名称(らしい;)。ベースギターの演奏方法。
         親指の横腹で弦をたたいた後、力を抜いて手首を返しながら人差し指で弦をはじく、を繰り返す。


 



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