「自分にさようなら」 Jun

何年か生きていると、いろんな「別れ」を経験するもの。
でも、自分の分身と別れたっていう人は、そういないだろう・・

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大学時代からの友人・ふみかは、すらっと長身の美少女。
でも、ほんとに体が弱かった。
どれくらいかといわれれば、 小走りしただけでも、次の瞬間には「よろ」と倒れてしまうぐらい弱かったのだ。

「今度の週末、海に行こうよ」
みんなで盛り上がって話していたときのこと。
ふみかは一人、黙ってうつむいていた。
「あ、そうか。ふみかは海は苦手?」
「ううん、ちょっとその日は予定があって…。みんなで行ってきて」
悲しい笑顔だった。
なんとかしてあげたい、でもどうすることもできずにいた。
そんなある日、 みんなで待ち合わせしていた喫茶店に、ふみかが嬉しそうにやってきた。
「今度ね、私自分にさよならできるのよ」
「……!!」
一同、ふみかの次の言葉を期待して待っていた。
「パパの知り合いに、祈祷師さんがいてね…」
と話し出した彼女のほおは紅潮していた。

                 ★ミ

ふみかの病気は、お医者さんもわからない原因不明のものらしい。
(じゃ、何か物の怪の仕業?)
と考えた両親が 祈祷師さんに相談したところ、
「体の中に、もう1人のふみかさんがいて悪さをしている」 とのこと。
だから、その1人を体から分離させなさい、と言われたらしいのだ。
え"〜っ、そんなばかな…
でも、ふみかはいたって真剣である。 実行の日は来週だという。
「さてさて、結果はどうなるか。乞ご期待」
自分を励ますかのように元気に振舞いながら、彼女は帰っていった。

その後、ふみかと会ったのは1ヵ月後ぐらいだったか。
なんとなく、後日談を聞きそびれていたというより、 もくろみに失敗して落ち込んでいるであろう、彼女を見たくなくて避けていたといった方が正解か。
結局、どうなったのかは、彼女の友人から聞いた。
「ふみかね、すっかり元気になったんだってさ」
「ふ〜ん」
私はなぜか、肩の力がふっと抜けたような気がした。

                 ★ミ

◎ ふみか談 ◎

「祈祷師さんに、『もう1人のあなたを【あやこ】と名づけて紙に書き、舟にのせて○○川上流から流しなさい。 それだけで、あなたはもう1人の自分から解放されるはずです』 って言われたとおり、舟を流したの。 そしたらね、舟が見えなくなった瞬間に体がふわっと軽くなったような、さわやかな気持ちになったのよ。信じられる? だって、上流まで行くときはタクシーに乗っていったんだけど、 めまいに吐き気、このまま気を失っちゃうんじゃないかっていうほど、体調が悪かったのよ。 でも、帰りはスキップして帰れるほど元気になったの!」

                 ★ミ

そんな、ウソみたいなホントの話ってあるんだなぁ。
彼女とはいまだにおつきあいが続いているが、元気そのものである。
知らない人に
「ふみかは、昔体が弱くて…」
と話しても信じまい。
それぐらい、元気になったのである。 あの日を境に。
何より、私たちは一緒に遊べることがうれしかった。
元気になったお祝いに、さっそく、みんなで海に行ったことを覚えている。

 

 

 

 

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