「スキー場のリフトにて」jun
その瞬間、告白するなら今しかないと思った。-----
大学のテニスサークルの仲間、10人ほどで長野のスキー場に行く計画を立ててい た。
(岡田先輩も一緒か…)
「やまちゃんも行く?」
の問いに、
「行きます!」
2つ返事だった。
スキー場は、私たちを歓迎するかのような快晴続き。
温泉で疲れを癒した後は、毎夜のように皆で飲みあかした。
そして迎えた最終日。
休日だったこともあり、リフトには順番待ちの長い列ができていた。
「今日で最後か。早いね」
その声にびっくりして振り向くと、先輩がにっこり微笑んでいる。
(え、ということは先輩と一緒にリフトに乗るってことよねっ)
それまでぼーっとしていた頭を、なにかでガツンと殴られたような感じだった。
(そういえば、4泊5日のツアーだというのに、先輩と一緒にリフトに乗るのは これが初めてだ)
ということに、今さらながら気づいた私は、
何の脈略もなく、 先輩に自分の気持ちを伝えるのは、今だ、と思いついてしまった。
「楽しかったですね〜っ」
自分の声がいつもの3倍は高くなっていることを自覚しつつ、リフトの順番を待つ。
すぐ後ろにも仲間が並んでいるが、もはや眼中にない。
(次は、いよいよ一緒に乗る番だ)
「先輩と一緒に乗るの初めてですよね、うれしいな」
もう、自分を止められない状況というのは、このことをいうのだろう。
シートに深く腰をかけると、両足を前後に揺らして喜びを表現する無謀な私。
1回、2回…3回目。
シートが上がりかけると同時に、前に戻した両足の板先が、 雪を積んであった小山にぶすっ。
(な、なに。足が抜けない)
一瞬のことで、どうにも動きがとれなかった。
リフトの係員も、このアクシデントにまだ気づいていないらしい。
シートはどんどん上がっていく。 私の板先は雪山にささったまま…
(え、え…)
私は見事なえび反りポーズを決めた。
そして、反りが頂点に達した時、ようやく気がついた係員がリフトを止めた。
係員に抱きかかえられ、降りるまでの数秒間がどれだけ長く感じられたことか知れない。
その間先輩は、となりでお腹をかかえて笑っていた。
(笑ってないで助けてよん・・)
当然ながら、この恋は成就しなかった。
そして、私はこの時以来、「2度と思いつきで告白などしない」 そう、心に誓った。