巷のおんなモード VOL.2 ぶらぼードトール!」

最近私の中でドトールが熱い。はまってしまっている。使い古された言い方ではあるが自称ドトラーである。
私は、週に1回のペースでポートプラザ内のドトールへ入り、カフェラテを手に奥の隅っこの席に着く。 そして私の目の前で繰り広げられる小さな世界を30分ほど楽しむのだ。  
そのドトールで、先日とても心温まる光景を見た。 白髪の老夫婦が買い物袋を下げて入ってきたときのこと。
「先にお金払うんだよー。注文してから席に着くんだからねー。知っているのかナー? 」 と口にこそ出さないが、心配しながらその老夫婦の行動を目で追っていた私の予想は大きく外れた。 この老夫婦は何度もドトールを訪れたことがあるらしく、慣れた様子で手順を踏み、コーヒー2つとあんパンをトレイに乗せて私の斜め前の席に着いた。 おばあさんがコーヒーに砂糖やミルクを入れている間におじいさんはあんパンを2つに割り、 差し出された「おじいさん好みのコーヒー」と交換するようにその片方をおばあさんに差し出した。
「ブ、ブラボーッ!おじいさん! ブラボー!おばあさん! ブラボー!ドトール!」
思わず私は心の中で万歳三唱した。
 
見回してみれば、プラザで働く人が休憩を取ったり、パート帰り(らしい)オバサンが、家には決して持って帰れない 職場の不満を同僚にぶちまけていたり、妻の買い物を待っている(らしい)初老の紳士…。その先には、高校生が携帯電話を片手にメールを打ちながらケーキをパクついている。
すごいぞ、ドトール! 地域密着型だ。みんなのためのドトールだ。  
バブル全盛期トレンディドラマにどっぷりとはまり、ブランドとグルメの中を右往左往していた私にとっての「ドトールコーヒーショップ」の位置付けは、“独身一人暮らしサラリーマンが立ったまま、それもオシャレに朝食を食べる場所”だった。テレビの中では、三つボタンスーツの本木雅弘が地下鉄から降りて、クールに風のように颯爽とホットドッグを食べていた。

少しの間生活した東京で実際、そんなイメージどおりのドトールを目に焼き付けてから10年、私はその間違ったままの認識を温めてきたのだからショックも大きい。 …が、現実のドトールの方がずっとずっと素敵だ。「何のためのスペースか」を、提供する側も利用する側もきっちりと心得ている。 それぞれ目的を果たしてトレイを戻し、「ごちそうさま」と店を出てゆく。

昨日今日出来たような若者相手のカフェにはとうていマネ出来ない「いぶし銀の魅力」を持つファーストフード店なのである。


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