いつか訪れる静寂の日

人生……幾たびもの変化あり。そして人は成長し老い、静かに最後を迎える。

若い頃には考えてもみなかった、人の変遷。
人生をすっかり折り返し、立ち止まりたいのに、時は無常にも過ぎ行く。
できることなら今の自分のままがいいのだが、悲しいかな、それも叶わぬこと。

周りで人生を終えていく人が増えるにつれ、ふとそんなことを考える私がいる。

そういえば、この家に引っ越してきた17年前。
親との同居がはじまった。まだ独身だった妹も含め7人家族でスタート。
賑やかで楽しい暮らしが一年ほど続いた頃、妹が我が家から嫁ぐ日がやってきた。
結納も済み、新居へと荷出し。あ〜これで家族が一人減るのだと感慨深く、
式の当日には人目も憚らず号泣してしまったことを思い出す。

家族6人の生活がはじまった。
それから、15年……。子どもが成長するにつれて今度は親が年老いていく。
介護・看病の末、父が昨年遠いところへと旅立った。
家族による手厚い充分な介護だったとはいえ、
元気な頃の姿がいまだに思い出される。

家族が5人になってしまった……。

来年また我が家に転機が訪れる。子どもたちが就職、進学の年になる。
独立して遠隔地へと行く可能性が大きいのだ。
もしかすると一度に子どもたちが家から巣立つ日がやってくる。
親としてはもちろん、希望と夢に胸膨らませる子どもたちを応援しているし、
子どもの成長はうれしいこと。
しかし漠然といずれは子離れ親離れすると思っていたものの、
いざ将来の展望がそこまで見えてきたことに愕然としている。

子どもを囲んでいるからこそ会話も弾んでいたといえる我が家。
大人3人だけの生活が悲しみを帯びて迫ってくる。

今でも、バイトや部活で忙しい子どもたちが夕食に揃わず大人3人で囲む食卓が
たまにある。誰も一言も喋らずに黙々と箸と口が動いていた。
ただ、うつろにテレビの音声だけが響いているだけ。

いつかは訪れるであろう静寂の日々が現実味を帯びて忍び寄っている。

それでもまた、それが普通の暮らしの情景に溶け込んでいくのだろう……。

 

銀の匙HOMEへ   さらの本棚へ   最新テーマへ